きゃんどる洞窟 CandCave

すらりぬらりとイデアさん[idea]、手記綴ら...

302号室の死体

遠くで救急車のサイレンが聞こえた。咄嗟にそちらのほうへ顔を向けそうになるが、直ぐに、目の前に立つ潮風で錆びた時刻表に焦点を戻す。6:42。夥しい程並ぶどうでもいい数字の羅列から、その三つを頭に書き留めると、男は横にいた女にやっと、唇だけの笑顔を見せた。「間に合うみたいだ」上着を羽織るでもないこの時期に、女の小刻みに震えているのが、男には左頬からでもわかった。「これは黄色よ」「いいじゃない、黄色」「そう...

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