きゃんどる洞窟

すらりぬらりとイデアさん[idea]、手記綴ら...

雷乙女

 
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「相変わらずシケた天気だ」


いつ頃から降っていただろうか。

分厚い雲に覆われ、太陽なんて見えやしない。

この世には最初からお日様なんてなかったんじゃないか、そう思えてさえくる程に。

「いけねぇ。こっちまで沈んじまう」
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仕事でも探そう。

最近土砂崩れがあったみたいだから、その手の復旧作業員でも募集しているだろう。


そうは言っても、こんな天気じゃ肝心の仕事もあるか怪しいが。



「よぉ。なんか仕事あるか」

「あぁ・・・お前か。」
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どうやら機嫌が悪い。

こういう時は結構な頻度で仕事があるものだ。

それも急を要する、危ないもの。


「実はな、ちょっくら問題事が起きてる」

「この間、でっけぇ土砂崩れがあったのは知ってるだろ。あれの影響で鉱山からの定期が来られなくなっちまってる。知っての通りここらのは頻度こそ少ねえが、それでも線路が使えなくなったとなっちゃあ支障がでる。まだ現場の安全は保証されちゃいねぇが、少しでも早く撤去したいんだ。・・・やってくれるか」

「構わねぇさ」

「そうか、助かる。それじゃあ現地に行って・・・」


俺らにはこんな仕事しかない。

でも食ってく為には・・・四の五の言ってらんねぇよな。





「どういうことだ?誰もいやしねぇ」
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指示された場所へ来たものの、そこには道具が置いてあるだけで誰もいなかった。

場所を間違えたか?

いや、それはない。ない筈だ。

以前にもこの場所には来たことがあるし、今一度地図に目を落とすも確かにこの場所には間違いなかった。


それにしても妙だ。

さっきから不思議に思っていたが、あたりには人どころか、生き物の気配すらない。

感じるのは肌に纏わり付くような湿気と、微かに乱れ始めた呼吸音のみ。

「・・・嫌な空気だな」


これも雨のせいだろうか。

いや・・・どこかでそうあって欲しいと、静かな祈りを捧げていた自分を見つけた時点でその考えは消え失せ、代わりに別の可能性が湧き出てきてしまう。



モンスター
怪物



普段目にする身近なところにも、奴らはいる。だがそういう奴らは決まって弱い。

それは街の警備兵や雇われ冒険者達が定期的に間引いているからだ。


だが。

彼らにだってミスはある。それにここのところ降り続けている雨のおかげで間引きの遅れも考えられる。


増えすぎた怪物に遭遇して作業を中断し、一時的に避難した。


他の作業員がいないのは、おおかたそんなところだろう。

「戻って報告しておくか」

そう自分に言い聞かせるように呟きながら、それでも何か飲み込めない、言い知れぬ不安のようなものを喉元に感じながら、来た道を戻ろうとした矢先。



背中の中心部に、悍ましい二つの視線を感じた。


あまりの悪寒と恐怖に身体は吊るされたようにピンと凍り付き、自分の呼吸が止まったのをただ理解するほかなかった。

もうひとつの別の可能性が、瞬時に脳裏を駆け巡る。

シンと静まり返ったことで僅かに聞こえる、荒い呼吸音と得体の知れない足音。


少しづつ近付く恐怖そのものを背に、吐きそうになりながらもやっとの思いで振り返ると、そこには暗闇のなかに不自然に浮かぶ大きな二つの光があった。



いけない。

目を合わせてしまった。


そう考えるより先に、身の危険を感じた本能が反対方向へと身体を動かしていた。



ギュォオオガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!


地響きのような唸り声が耳を劈く。



あれは何だ。

ナンナンダ。


必死に走りながら頭のなかで他の作業員の行方を想像するにつれ、額の脂汗が止めどなく溢れてくる。

再び、しかし今度は急速に近付く地鳴り。


その存在を耳元にまで感じた瞬間、突如風切り音が聞こえたような気がした。


ギギュギウギイィイイイイイイイイイ!!!!!!!!!


何が起こったのか理解できぬまま、あまりの衝撃で吹き飛ばされる。


数度の衝撃と轟音、そして何かの叫び声。

うずくまり、今まで信じてすらこなかった神に祈っていると、暫くして先程とは異なる足音が聞こえた。


足音の方へ恐る恐る目を向けると、そこには雷の光とともに、その体格には不釣り合いなほど大きな斧を背負ったひとりの女の姿があった。


その瞬間、死の緊張から解きほぐされたことを脳が悟ったのか、視界が揺らぎだす。

雷鳴を肌で感じ、まるで空の天罰がカタチを伴って眼前に現れたかのように思いながら、そのまま暗闇に身を任せた。




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