きゃんどる洞窟

すらりぬらりとイデアさん[idea]、手記綴ら...

差し伸ばした手の先は

 


子どもの頃、暑い時期によく花火をした。

友達と昼間遊んだあと、日が暮れてくると一度それぞれの家に帰り数時間後にまた合流するのだ。

もう太陽は見えないのに、再び集まって夜に遊ぶのがなんだかいけないような気がして、不思議な感じで、わくわくした。

淡い閃光。

波音のような光のシャワー。

笑い声のなかでひとつだけ透き通った、鈴の微風。


その風は、今でも自分のどこかでそよぎ続けている。

ただひたすらに世界に心躍っていた、記憶の浅瀬のなか。


そういや、あのとき隣にいた女の子はどんな子だったろうか・・・








「・・・・・・ウッ・・・」


どれほど意識を失っていたのか。


自分が今どこで、どうなっているかを悟るにつれ、まだクッキリと残っている恐怖の外縁が身体中を駆け巡るまで、それ程時間はかからなかった。


闇の中で不気味に浮かぶ二つの光。

獲物を見つけたときの荒い息遣い。

恐怖。

ゆっくりと、だが確実に自分に迫る静かな足音。

地鳴り。

恐怖。

破裂寸前の鼓動音。

恐怖。

きょうふ。

キョウフ。


雷。



「気がついたか」
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「うおわァッ!!!!」

今まさに考えていたものが目の前に出てきたら、誰だって驚く。

「どうやら大丈夫みたいだな」

そういってその女はそのまま立ち去ろうとした。

「・・・ま、待ってくれ!!」

立ち止まり、何か言いたげな様子でこちらを振り返ると、訝しげな目つきで睨む。

「あ、あんたは・・・一体・・・」

「・・・」

唾を呑み込む音がやけに大きく感じるなか、沈黙を破ったのは女のどこか重い足音だった。






「そうか・・・わかった、こっちで手配しておく。それにしてもよく無事だったな。」

情の欠片も感じられない淡々とした口調に、今更思うこともない。

事の報告を済ませた後、どことも知れずふらふらと歩き出す。


あの女のことは何故か話さなかった。

自分に問うても答えが出る気はしないが、どこかでその方がいいのだろうと感じていた。


交互に出る爪先を見つめながら今後のことを思う。

確かに今までにも身の危険を感じたことはあった。それも何度も。

だが今回起こったことに比べれば、それまでのは所詮たいしたことないものばかりだったということになる。


こんなことを経験してしまって、これからも同じようなことができるだろうか。

半ば放心状態のまま、いつもの日常を求めてか、いつの間にか脚先はよく行く安酒屋へと向かっていた。
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気が付くと夜空が見えた。

いっぱいの群青にチカチカと瞬く無数の星。

激しい頭痛と身体中の痛みを感じ、珍しく呑み過ぎたのだと理解する。

兎に角身体を起こそうとした刹那、ここが首都ではなく城門外だとわかった。

そういえば、と安酒屋でいつもは見かけないチンピラの集団がいたのを思い出し、酔った流れで・・・とおおよその推測はついた。



このままじゃいけない。

待っているのは後にも先にも犬死にだ。

あの時だって、単に運が良かったに過ぎない。

寧ろ今までよく生きてこられたほうなんだ。


とその時。不意に人の気配を感じた。

誰かがいる。


・・・まずい。

相手は一人のようだが、こんな時間に外を彷徨くやつだ。

ただの散歩している通行人なんてことはない。

盗賊だろうか。


あぁ。

終わりだ。

なんてまぬけな人生だったんだろう。


もうどうにでもなれと、すべてを諦めた覚悟で嘆いていると、近づいてきたその何者かが声を掛けてきた。


「つくづく馬鹿な奴だな、お前は」



どういう巡り合わせか、そこに立っていたのはあの女だった。


こんなことがあるのだろうか。

もうここまでくると頭の中は、ひとつの問いかけの他は真っ白だった。

そして命令してもいないのに、気付くと唇からは自分でも驚く言葉が発せられていた。


「・・・頼むッ!あんたに同行させてくれ!!荷物持ちでもなんでも、できることはなんだってする!!」




「・・・いらない。足手まといだ。」

それでも言葉は止まらなかった。抑えようがなかった。

「馬鹿な話だってことは十分わかってる!でも・・・このままじゃ俺、いけねぇんだ・・・もうそれしかねぇんだ!!」


「・・・・・・」




彼女は立ち去った。

返事としては何も無かった。


でもそっと後をついていっても、彼女は何も言わなかった。


どこへ向かうのかと歩いている先を見遣ると、ちょうど朝陽の昇るのが目に入った。
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