霧蝉

暑い
暑い。
ともすれば次の瞬間には、そうでもないような・・・
しかし気が付けば、8月ももう終わり。
未だ陽が昇ると、あちらこちらから鳴き声が聞こえてはくるものの、何とも早いものです。えぇ。
こうして我々はまた一つの「夏」を過ごし終えました。
この「夏」を、今後一体どれほど味わうことになるのでしょうか。
・・・どれほど?
いえ、実際にはもう、ない。
ないんですよね。
季節だとか1年だとか、そんなもの考えてみれば在るわけがありません。
いま。
この細胞ひとつひとつが寄り集まったもの。そうしてカタチを成して出来た貴方であり、私で在る、至極奇妙な存在。
それらのおよそ -眼- と呼ばれるものが写し出す、揺れに揺れる果て無き不鮮明な、一つの世界。
いま。
そんな世界を、大きな大きな一本の樹に例えるとして。
するとどうでしょう。
その樹のどこか・・・。不意に聞こえてくる、張り裂けんばかりの幾つもの声。
いつから泣いていたのか。
いつまで泣くのか。
そもそも彼等はどこにいるのか。
でも、貴方は気付いている筈です。
一人しかいないとわかっているのに、何人もの声に聞こえてしまうように・・・
「あの泣いているヒトは、自分とそう遠くないところにいる。」
貴方もきっと、一匹の蝉なのです。
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