きゃんどる洞窟 CandCave

すらりぬらりとイデアさん[idea]、手記綴ら...

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(avant)














はいつもと変わらず濁っていた。

分厚い灰色の影で覆われ、遠くにゆらりと浮かぶ山々は視えるようでいて、そのどれもに確たるカタチはない。


ジーラさんは今は昼だと言う。

昼というのは空に陽が昇って辺り一帯が照らされ、光がどこまでもすぅっと澄み渡り、空気がぽかぽかと暖かい時間......らしい。

そんな嘘、誰が考えたのだろうか。

自分が知っているのは、六期中曇ったままの空、そしてその遥か向こうに横たわる出処のわからない、滲むような曇り陽。

風は酷く不安定。まともに吸い込み、心地良いと感じたことは一度もなかった。

外へ出てコートを脱ぐのは、生きるのを諦めた者。


太陽は恐らくあるのだろう。村外の所々に辛うじて立つ壊れた街灯のほうが余程明るいが、その存在だけは感じていた。

しかし目にしたことはない。

それはこの数百年間、生きている者は皆そうだ。


どこかで囁く声が聞こえた。女の泣き声とともに。


四期目に入ったばかりで、もう6人目。

一番近くの村はこの間熱雨にやられた。


この村にはまだ人がいる。

でも年々、少しづつだが気温は下がり続けている。


ふと、つい二三日前にここを通り掛かった骨董品売りの顔が浮かんだ。

あの人はこんな時代に一体どんなものを売っていたのだろう、そんなことを考えていると風化しかけのドアが勢いよく開かれ、壁にかかった布切れのようなものが落ちるのも気にせず、せかせかと一人の女性が此方へやってきた。

「また駄目だった、徐々に産まれなくなってる」

逆光で彼女の表情は見えなかった。

「副議長が議会を早めるそうです。急いで下さい」

「今行きます」
用件だけ伝えると、やけに焦ったその人はまたも無理にドアをこじ開け、出ていってしまった。



彼は立ち上がって、床の継ぎ接ぎだらけの帽子を拾い頭に被った。

そうして机の乱雑な紙切れの中から表紙が訂正線でぐちゃぐちゃの「霧鐘計画(第十二稿)」と記された書類を手に取ると、それを小脇に抱えながら自室を後にした。







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